| 真実に潜むもの。 |
| 「…昴」
「何泣いてるんだ、プリティフェイスが台無しだぜ?」
記憶が一気に戻れば良いのに、ただもどかしいだけ。
気付いていながら、でも気付かない振りをしていたのに。
「…このまま…お前をシグルドに渡してもいいと思ってた」
俺の問いには答えず、続ける。 「でも、やっぱりダメだな。お前を誰にも渡したくない」 「なら、なら…」
幽霊だろうがお化けだろうが、今現にレナートは俺の前にいる。
でも、と続く。 「シグルドに聞いて解ってるだろ?俺は死んでる…ゴーストだって」 「…だから何?」 レナートに一歩、近付く。 「俺、気付いたんだ。あんたのことが好きだって」
何も知らなくても、レナートを好きになったんだ。 「前、危ないときに呼んだ人が、忘れてる一番好きな人だってあんたが言った」 思わず叫んだ、でも本気で助けて欲しかったのはレナートだった。 「レナートが好き。性別だとか生きてないとか、そんなのどうでもいいよ」 好きだから傍にいたい…ただそれだけ。
レナートは長い沈黙のあと、そう答えた。 「…うん…」 嬉しくて、また溢れる涙を拭いた。
「平気。悲しいけど大丈夫」 それは生きていても死んでいても、いつ訪れてもおかしくないことだから。
「……だって…触れるんだよ?」
何度言っても言い足りないほど、そう伝えたいと思った。 「俺も…昴が好きだ」
今までだったら、そんなこと誰にも言えなかったと思う。 レナートがゆっくりと近付いてきて、そっと、唇に触れるだけのキス。 懐かしい、暖かいキスだった。 やっぱりそうなんだ。 エリダラーダに来て、アダムの息子として誰かの願いを叶えた俺。 でも、何故俺はレナートを忘れているんだろう。 俺とレナートに、何があったのだろう。
「うん」 レナートは俺を抱きしめてそう言った。 だから、言葉なんて要らないように、このまま2人が同化してしまえば。
兵隊戦死者の墓の前でクラウスは銀色の髪を見た。 「…未練は消えはしない。だが、いずれ魂は帰るべき場所へ引かれる」
クラウスの瞳が赤く光る。 「…あの亡霊は…アーテシュリングに誓っている」 ヴェンツェルはレナートの名前の彫られた場所に触れた。
ヴェンツェルの意図が読めず、クラウスは首を傾げる。 「月の位置をずらす」 「…?!」 「今のままではアダムの息子の力も弱いからな」 ヴェンツェルはクラウスを見た。 「あなたの願いを叶えるんですか?」
クラウスは呆れたように言った。 「…お人好し、ですね」 「ただの気紛れだ」 くっと笑うと、レナートの名前から手を離した。
「…やりますよ」 仕方ない、とクラウスは溜息をつく。
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