| 胸の奥に咲いたもの。 |
| 「あ」 リスルゥが耳元で声を出した。
「おさかなだね」 リスルゥは嬉しそうに言い、目を輝かせていた。
「昴、待たせたな」 シグルドの声を頷きながら、消えない視線の主を探す。 「どうした?」 「ん…ちょっと…あ」
こっちを、じっと見ていた。
「…レナート?!」 シグルドが驚いたように言った。 「あれ、シグルドも知り合い?ちょっと待って、今連れ…」
「何…?痛いよ、シグルド…」 「昴、何を見た?」 低い声で訊ねられる。 「何って…友達…レナートだよ」 シグルドは険しい顔で俺を見ていた。
「は?バカ言うなよ、居るって!」 睨みつけると、より肩を強く掴まれる。 「レナートは居ない…死んだんだ」
レナートを見た方向を指差すが、さっきまであったはずの姿がない。 「気のせいだ…何かと見間違えたのかもしれないだろう」 「違う!!」 首を振って思い返す。
何故か急に悲しくなって、シグルドを振り払った。
「昴!!」 リスルゥを落とさないように、居たはずの場所、その近辺を探した。 「昴…」 リスルゥが何か言いたそうにしていたけど、返事をしなかった。
何で俺はこんなことしてるのかな。 死んだなんて嘘だ。
呼ばれて振り返ると、また祭に紛れ込んだのか、軽装のアレクがいた。 「アレク…?」 「そんなに息を切らして何してるの?」 「アレクこそ…なんでここに…」 王様だし、今日は慰霊祭だからやることがたくさんあるはずなのに。 「挨拶も終わったし、せっかくのお祭なんだから、街を見ようかなって」 首を傾げながら笑う。
息を切らしている理由を思い出して、アレクに訊ねた。 「レナート…さん?」 「うん、金髪で右目に眼帯してて、傭兵風なんだけど…」 アレクはそれを聞いて思い当たる節があるのか暫く困っていたが、口を開いた。
「…墓地?」 また、墓地。
「何で?」 質問には答えないで…ただ笑って、俺の手を取る。 「…お兄さんに…主のご加護がありますように」 そう言って手の甲に口付けた。 「……またね、昴お兄さん」
暫く沈黙していると、リスルゥが呼ぶ。 「何だ?」 「…泣いてるの?」 「ぇ?」
袖で涙を拭いて、墓地に向かおうと方向転換をしたとき、後ろに居た人にぶつかった。 「…ぁ、すみませ…」 心配そうな顔のシグルドだった。
「嫌だ!」 力一杯睨みつける。 「レナートを連れてくる!それで文句ないだろ?」 「文句も何も…」 「…っ…レナートは居るんだ!」
「どこに…」 「昴」 真剣な声。
「な…」 壁に押しつけられて、リスルゥは肩から降りて俺の足下にすり寄った。
簡単に理解できることなのに、最初何を言っているか解らなかった。
助けて欲しい。 誰でもいい。
力一杯叫んだつもりなのに掠れて声なんか全然出なかった。
強い風が吹いて、ふとシグルドの手の力が消えた。
目を開けると、シグルドが倒れていて、その傍にレナートが立っていた。 「…レナート…?」 消えそうな声で、呟いた。
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