| 呼びたくても思い出せないもの。 |
| レナートとの逢瀬。 会う度に、不思議と気持ちが落ち着く。 何だか懐かしい気持ちになる。 何かを…誰かを忘れていることなんて…どうでもいいと思う反面…苦しくて思い出したくなる。
今まで一緒に居て解ったことは少ない。
「レナートも行く?」 「行かない」
「明日は用事があるんだ…だから昴は俺の分もエンジョイしてこいよ」 「ぅ…うん…」
「…でもさ、用事が終わってもし来れそうだったら…レナートも…な?」 そう付け加えると、少し驚いていたが、頷いた。
ふと、レナートに、俺の記憶のことを話したくなった。 「俺、記憶がすっぽり抜けてるんだ」
「…誰かと一緒に過ごした時間だけ…3ヶ月間の記憶が」 「…それで?」 「その人のことを…思い出したいんだ」
自分が傷つくだけで済むのなら。
「…それも…解らないんだ。大切な人だと思うんだけど」
「思い出して…どうしたいんだ?」 「どうしたい…?」
その意味も理由も解らない。 「忘れていることに意味があるなら、思い出さない方がいいこともある」 レナートはそう言って俺の頭を撫でた。 「…でも…」
でも、思い出さなきゃいけないような気もする。
会って、どうしたいのかも解らない。 それでも、会いたい。
「…解らない…けど、そうだと思う」 直感だけど、確証はないけど。
「うん…」 溜息をついてレナートはゆっくりと立ち上がった。
「でも…昴が直感を信じるなら」 言葉を切って、レナートは俺を見た。 「昴に何かデンジャーなことがあったとき、一番最初に名前を呼んだ人がその大切な人だと思う」 「…一番最初に名前を呼んだ人…?」 「いくら記憶がなくても…潜在意識とかってのがあるだろ」
「…うぅん…ありがとう…変なこと言ってごめん」 謝って、俺も立ち上がった。
「あぁ…」 レナートの不思議な色の瞳が揺れる。
「……グッナイ、昴…いい夢を」
そのまま、手を振って別れた。
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