世界で一番早く朝が来る場所〜永遠〜C




 エンヴィーの部屋に入ると、エンヴィーは少し考えてから言った。

「ねぇ…お兄さんは…どうして俺を指名したの?」

「…君の噂を聞いて、一度逢ってみたいと思ったんだ」

 答えると、エンヴィーは大きなベッドに私を座らせ微笑む。

「ありがとう」




 そう言って私の膝に座り唇を寄せた。




「ね…どんな風に抱いてくれるの?俺、何されてもいいし…しろって言うなら何でもするよ?」




 触れるだけの口付け。
 私はエンヴィーを膝から降ろし、自分の横に座らせた。




「君は私に抱いて欲しいのかい?」

 驚いた顔でエンヴィーは言った。

「俺を抱きたいんじゃないの?だから来たんじゃないの?」

「…君が私に抱いて欲しいと言うなら」




 エンヴィーは俯いて小さな声で呟いた。

「……何で…そんなこと言うの…?」




「…私は君と一緒に居たいだけだ。抱くために来たんじゃない…」

 泣きそうな顔を向け、エンヴィーは私の服の裾を握る。




「どうして…?みんな俺の体が目当てで…俺の意志なんか関係なくて…」

「そういう客ばかりでは…君も疲れるだろう?」




 頭を撫でてやると、涙が溢れた。

「…お兄さんて…変なの…」

「そうか?」

「…うん…」




 しばらく泣いた後、涙を拭くと、エンヴィーは話し始めた。




「俺…好きな人が居た…男の人だったけど。その人、お兄さんに似てるんだ」

 何も知らない振りをして聞く。

「顔も声もそっくり…俺のこと、大事に愛してくれてた。優しくて…強くて…」

 何かを思い出すように私の顔を見る。

「俺を無理に抱こうとはしなくて…紳士だった。俺、その人が大好きで…その人のために生きたいって思ってた」




 言葉が切れて、また涙が浮かんでいた。
 私の肩に頭を乗せて、また話し始める。

「…でもね…その人、俺を残して居なくなっちゃった…死んじゃったんだ」




 生きている。
 それは私だと、告げたかった。

「その人にもらったもの、全部捨てて…でも忘れられなくて…その人に似てる人を相手にして…抱かれてた」

「…疲れるだろう?」

「うん…でも、お世話になった人にお金返したくて」




 自分は去年の夏まで男に抱かれる仕事していたこと、金を出して自分を自由にしてくれた人が居ること。
 その人たちのおかげで好きな人と一緒に居られたことを話してくれた。




「疲れるけど…慣れてるから平気…」

 だから、安心して。
 そう言って私のことを見る。




「…泣かないでよ…お兄さん…」

 細い指が、いつの間にか流れていた涙を拭う。

「…ぁ……」

「変なの」

 慌ててハンカチで涙を拭うと、笑いながら言われた。




「優しいんだね、お兄さん」

 自分は優しくも何ともない。
 ただ、ワガママなだけだ。
 エンヴィーに、本当の事を言えないでいるのだから。

「…そうか?」

 それでも、そう返すことしか出来なかった。




「うん。それに…お兄さん、わざわざこんなとこに男抱きに来るような人には見えないよ」

 その言葉に、苦笑して答えた。

「私もそう思う」

「…お兄さん、俺のこと抱かないなら安くしてあげるよ」

 エンヴィーは何でもないように言った。

「え…?」

 言葉の意味を理解して驚くと、頬を染めながら見つめてくる。

「俺の身体に負担ないし…お兄さんのこと気に入ったし」

「だが…」




「それに…今度からはお金ナシで逢ってあげる…」

 その直後、細い身体のどこにあるのか不思議なほど強い力でベッドに押し倒される。




「…エンヴィー…?」

 エンヴィーが上にのし掛かる。




「…逢いたいとき…電話して…」




 真剣な目をしていた。
 そのまま、何度も深い口付けを交わし、強く抱きしめる。




 帰り際。
 エンヴィーの部屋への直通の番号を教えてもらった。
 自分のものは今繋がっていないため教えられず、決まり次第知らせると言った。

 受付にエンヴィーが連絡したのか、料金は30万になっていたが、女性は何も言わなかった。

「またのご来店をお待ちしております」




 その声を聞きながら、何故エンヴィーに本当のことを話して彼とともに帰らないのかを不思議に思った。