世界で一番早く朝が来る場所〜永遠〜A




 電話や連絡手段の復旧に時間がかかり、軍に生存を知らせる頃には戦争終結から2ヶ月も経っていた。
 国境付近ではまだテロやら何やらと色々あったらしい。
 小さな街だからか、被害は全くなかったが…それでも生活に困らないだけで何かと不便ではあった。

 軍への連絡をすませてすぐ、ハボックの家に電話をかけた。

 軍やヒューズが戦死と断定して連絡しているだろうが、私は生きている。
 そう知らせたかった。

 誰よりも、あの子に。




「ジャン・ハボックか?私だ…ロイ・マスタングだ。久し振りだな」

 電話をかけ、そう告げると、ハボックは心底驚いたようだった。

『…大佐…!生きていたんですか…!』

 怒っているような、喜んでいるような…複雑な声で。

『…今まで何してたんすか…!』

「入院していたんだ…ヴァンの小さな病院に。国境だからまだ小競り合いがあって連絡が遅れた。すまない」




 しばらくの沈黙。
 震える声で聞かされた事実。




『……っ……エンヴィーは…ずっと待ってたんですよ…』

 息を飲んだ。

「エンヴィーに…何かあったのか?!」

 訊ねると、ハボックは言いにくそうに…でも、はっきりと言った。




『…うちを出ていきました…つい先日』




「何…」

『大佐が死んだときかされて…思い詰めた様子で…ずっと部屋に隠ってました』

 私が出征する前もあの子は隠っていた。
 何を考えてそうするのかは解らないが、何故出ていってしまったのか。




「今…エンヴィーはどこにいるんだ?」




 自分でもひどく落ち着いた声だった。




『一応…解りますが…でも…』

「ハボック…!」

『…ガトーです』

 言葉の意味を理解するのに、さほど時間はかからなかった。

「…まさか…」

『また…同じ道に』




 ガトーは色町として発展した場所だ。
 男だろうが女だろうが、そこに集まる。




「何故連れ戻さない」

『…俺たちに世話になった分、金を返したいって。要らないって言ったのに、自分にはこれしか道がないって…』

 もともと男に抱かれて生きてきていたエンヴィーだ。
 そうすることしか浮かばなかったのかもしれない。

 ハボックも、どうしていいか解らないらしいし、リザも落ち込んでいると言っていた。

「…すぐに戻る…あと3日ほどだ」

 ハボックやエンヴィーたちとはほぼ対角線の場所に居るため時間はかかる。
 だが、そんなに待たせるわけにはいかない。

『……大佐……』

「…今更遅いんだろうが…このまま…別れたくないんだ」




 あの子を初めて見たのは、一昨年の夏の初めだった。
 そのとき、彼は大通りの花壇の、まだ咲いたばかりのひまわりを羨ましそうに眺めていた。

 何故かその姿にいやに惹かれたことを覚えている。




 そして2度目。
 思わず引き留めてしまった。
 それから始まった。




 それからあまり時間も経っていない秋、彼のことを傷つけて別れた。
 でも、まだ希望はあるはずだ。




 こんなにも、彼を愛している。

 元の関係には戻れなくとも、彼を正しい道に連れ戻したい。

 それが自分の生きる道だと信じていた。

 それが全てだと。

 自分の誠意を彼に伝える術だと。