世界で一番早く朝が来る場所〜約束の場所へ〜N




 大佐を嫌いになるなんて、無理だった。
 どうやったら嫌いになれるのかも解らない。
 言葉でだけ、表面でだけになる。
 それならば、心の中では…ずっと大佐を思っていよう。






 ずっと、愛していよう…ずっと。






 大佐が旅立つ前日、小包が届いた。
 差出人は不明の、俺宛…大佐だろうと予想したら、案の定そうだった。




「…今更…何なのかなぁ…」

 何も、形のあるものは要らない。
 大佐だけ欲しい。
 俺が愛したたった一人の人。
 愛し合った証なんて要らない…一緒に居たい…ただそれだけだから。




 包みを開けると、手紙と箱。
 箱を開くと、小さな箱が2つ。
 1つは明らかに指輪の箱だった。
 開くと、あの日大佐が買った指輪。




 もう1つの箱には、また箱が入っていて…それには鍵がかかっていた。




 手紙には、こう書かれていた。




 『エンヴィーへ




 あの日、君を追いかけなかったこと、君を悲しませたこと…君を裏切ってしまったこと。

 全て悪いのは私であることは重々承知している。

 それでもそうせざるを得なかったのは、君のことを思ってであることは、知っておいて欲しい。




 弱気であるということは自分でも解っていた。

 それでも、君の幸せのため、と思っていた。

 それが、君とは違うものを指していたとしても。

 軍人であるがゆえ、この先どうなるかなど解らない私には、確かな未来など約束できなかった。

 君を幸せにするなど、口だけになる約束など、したくはなかった。

 まだ若く未来もある君を私の約束で縛り付けるのは、君がどう思おうと、私は嫌だった。

 せっかく、君は自由になったのだから。

 1人の男の身勝手な約束でまた、繋がれた人生を送らせるなど、私には許せなかった。




 だから、君を突き放した。

 君が傷つくことを解っていながら。

 それでも、その傷はいつか癒えて、また綺麗な笑顔を見せられると願って。




 私を嫌い、他の誰かを愛しても、幸せになれるだろうと。




 私は今もこれからも、君だけを愛する。

 しかし、今は君を幸せにするという確かな約束は出来ない。

 今の君は、私を捨て他の誰かと未来を築くことの出来る状態だ。

 望むならばそうしていい。

 君を愛する人は沢山居る。

 その中に、もしかしたら私以上に愛しく思える人がいるかもしれない。




 ただ…もし君がまだ私を愛してくれるなら。

 私を許して、私が帰ってきたとき、君が私を選んでくれるならば。

 そのときは、どうか、私と結婚して欲しい。

 そのときは、君を幸せにすると約束しよう。




 君はあの日、自分の幸せは私の傍にいることだと…そう言っていたね。

 私も、君の傍にいることが私の幸せであると…そう思っている。

 だから、君のもとへ帰ってくる。

 愛する君の笑顔を見るために。




 ロイ・マスタング




 追伸

 指輪は私からの贈り物だから、どうするかは君の自由だ。

 箱は、もし私に何かあった場合、鍵を開けて欲しい。

 鍵は、約束の場所にある。』