世界で一番早く朝が来る場所〜約束の場所へ〜M




 最初に欲しかったのは自由だったんだ。
 なら、もう俺は自由なんだから…大佐なんかいらないじゃないか。

 大佐なんかいらない。
 もう、いらない。
 最初から好きな人なんかいらなかったんだから。




 部屋へ駆け込んで、ベッドに倒れ込んで…泣いた。

 大佐と離れることが辛いんじゃない。
 自分の言ったことを後悔してるんじゃない。

 何故だろう。
 何故か、悲しくて涙が出てきた。
 何が悲しいのかも解らない。




「…バカ大佐…」

 自分から手放して今失ったばかりなのに…もう未練?




「…幸せに…なれると思ってたのに…」




 なりたかった。
 それがどんなものかは知らなかったけれど。

 でも、何となく解って。

 それを簡単には手放したくなくて。




「一緒にいられるだけで…本当によかったんだよ…」




 少しでもいい、一緒に居られれば。
 離れてしまっても、それは仕方のないことだと。
 それは今も同じ。




「…なのに………何で……何で…?」




 未来なんて解んないのに…どうして別れるなんて言ったの?

 それだけが許せなくて…それだけが、引っかかって。

 大佐の本心を聞きたいのに、もう聞けない。

 今はもう。

 俺は大佐の恋人でも何でもないんだ。






 それから3日間、一歩も部屋から出ずに過ごした。
 部屋にシャワーもトイレもあるし、3日くらい何も食べなくたって生きていけるから。

 リザさんたちは何も言わなかった。

 何も考えたくなくて。
 ただ部屋の中で、ベッドに横たわって天井を見上げていた。




 俺にとって、生きるって何なんだろう。
 生きている必要なんて特にない。

 それでも生きている。




「大佐がいたから?」




 やっぱりそれなの?
 大佐がいたから生きてた?

 大佐に出逢ってからはそう。
 大佐に逢えれば嬉しくて、生きていれば逢えるって。

 本当に好きだったんだ…毎日逢いたくてたまらないほど。




「あの頃は…生きていて自由になって…それから先なんか考えてなかった…」




 でも、大佐に出逢ったときに大体決まった。

 好きな人と一緒に居られたら、いいなって。




「…大佐なんか…好きにならなきゃよかった…」




 何で大佐なんか。
 男の人なんだから。

 最初から、無理だったんだ。
 結婚なんか出来っこないんだから。
 したいわけでもなかったけど。




「……もうヤだ…」

 泣き疲れて、目を閉じた。






 4日目、リザさんが教えてくれた。
 大佐の旅立つ日を。

「…11月の21日だそうよ」

「…そう……」

 ドア越しにそう返事をして、溜息をついた。

「…エンヴィー、どうして…出てこないの?」

「…出たくないから」

「体に悪いわ」

「…ヤバくなったら行くから心配しないでよ」

 素っ気なく言うと、リザさんは泣きそうな声で言った。

「……心配かけさせないで…」

 何故かその声を聞いたら…出なくてはいけない気がした。




「…ロイのことでじゃないの…あなたが…心配なのよ…」




 続いた言葉に、俺はゆっくりと部屋のドアを開いた。






「家族なんだから」