世界で一番早く朝が来る場所〜約束の場所へ〜K




 12時丁度に大佐がやってきて。

「エンヴィー、行こうか」

 何だか辛そうな顔をして俺に言った。

「うん!」

 元気がない大佐。
 どうして?

 何か嫌な予感はしつつも、それを振り払うように笑顔を作った。






「いきなり浜を歩こうなんて…一体どうしたの?」

 2人で歩くのは久しぶり。
 なのに、俺と大佐は少し離れて歩いていた。
 手を伸ばせば、手を繋げる距離。
 だけど、その距離がとても遠く感じた。

「…君に言いたいことがあるんだ」

「言いたいこと?」

 大佐を見ると、とても言いにくそうな顔をしていた。

「…エンヴィー……岬まで行こう」






 秘密の岬。

 空は相変わらず曇っていた。






「言いたいことって…何?」

 大佐と向かい合って…でも大佐は俯いたまま俺を見ない。




「…エンヴィー、好きだよ」




 ようやく顔を上げた大佐は、真剣な顔でそう言った。

「ありがとう…大佐。でも、いきなりどうしたの?」

 解らなくて訊ねると、不意に抱きしめられて。




「…世界で一番、君を愛してる」

「…俺もだよ?」

「君以外、私を強くも弱くもできる存在はない」

 俺と同じこと。




「大佐…変だよ…?」

「…この前、ずっと…一緒にいると…約束したね」




 どうして。
 そんな言い方を。

「……うん…」

 何だか聞きたくなくなった。




「私は、君と一緒にいたいといつも思っているよ」




 大佐…お願いだから先を言わないで。




「だが…」




 お願い。


「…戦争に…行かなくてはいけなくなったんだ」




 聞きたくないのに、俺の耳はその言葉を拾って。
 俺の脳はその言葉の意味を理解した。




 世界のどこかで…戦争が始まったことは知ってる。
 2つの国が国境が何だって騒いでる。
 そのうちの片方と結んだ軍事条約があるから…この国は味方として何だかんだ…新聞に載っていた。




 でも、関係ないと思ってた。
 現実から目を逸らしたくて。
 大佐は大佐だから…行かなくてもいいって…勝手に。






「…何で…?」




 頭の中は色んなことがぐるぐるしてる。
 大佐に、震える声で訊いた。

「…私が…軍人だからだよ」

「…そうじゃなくて…何で……一緒にいられないの?帰ってこないの?」




 大佐の顔が見れない。
 自分が責められているような気がした。




「…どうなるか解らない…だから…約束は出来ないんだ」

「…帰ってこれないかもしれないから…だからダメなの?」

「そうだよ」

「…帰ってきたら…どうするの?」

「…そのときはそのときだよ」

 どうしてそのくらいのこと、約束してくれないの。

「…君との約束を守れないかもしれない…だから…」

 何が、だからなの。

「…別れよう」

 大佐の声が、やけに大きく聞こえた。