世界で一番早く朝が来る場所〜約束の場所へ〜I




 あの頃の俺は、ただの世間知らずの子供でしかなかった。
 だから大佐も、あんな風に俺に一方的に責められても何も言わないでいたんだと思う。






 10月のあの日。
 朝からずっと雨が降っていた。
 誰もが出払っていて、家には俺一人。

 大佐に逢いたいなと思っていて、ワガママだなと自嘲して。
 好きなら傍にいたいと思うのは普通。

 こんな風に俺を女々しくするのは大佐だけだと。

 俺が強くなるのも弱くなるのも、大佐の存在如何。




 お昼を食べて部屋にいたら電話の音が聞こえた。
 慌てて1階の居間にある電話を取った。

「はい、ハボックですが」




 受話器の向こうから聞こえたのは、大佐の声。




『エンヴィー?』

「大佐?どうしたの、いきなり」




 嬉しくて、明るい声を出した。

『いや…エンヴィーが出たなら、丁度いい…明日、時間はあるか?』




 大佐の声は、何だか沈んでいて。




「…どうしたの?何か元気ないね?大丈夫?大佐…」

『ちょっと寝不足なだけだ…心配ない』

「そう?ならいいけど…お願いだから無理はしないでね…」

『あぁ』

 無理をしているような声で、大佐は答えた。

「…明日はいつでも空いてるよ」

『そうか、じゃあ12時に迎えに行くから…一緒に浜を散歩しよう』

「散歩?」




 もっと恋人らしいことをしてくれればいいのに。




「うん、解った」

『それじゃあ…また明日』




 素っ気ない会話を交わしただけで切れた電話。
 もっと話したかったのに。
 昨日俺が育ててた花が咲いたとか、エドワードが身長伸びて騒いでたとか…アルが猫を拾ってきたとか。
 くだらないかもしれないけど、大佐に言いたかったのに。