世界で一番早く朝が来る場所〜約束の場所へ〜C




 キス以上したくても、起こしに来たのに起きてこなかったらおかしいから、出来なくて。
 あの日以来感じてない大佐の全てを意識してしまう。




「…もう…行こう」




 大佐が唇を離して大佐が起き上がる。

「ん…」




 服を出してパジャマ代わりに着ていたシャツを脱ぐと、大佐に後ろから抱きしめられた。




「相変わらず白いな」

「焼きたくないし」

「…あの日つけた跡は消えたみたいだな」




 キスマークは全部消えた。
 消えて、悲しかったけど、またつけてくれればいいと思って。




「着替えたいんだけどなぁ?」

「着替えればいい」

 体を離してベッドに腰掛ける大佐を見て。

「これ、似合う?」

 さっさと着替えてみせた。

 白のシャツにジーンズ…それに黒いエプロンを着けて。




「何か作ってくれるのかい?」

「作って欲しい?」

 大佐の横に腰掛けて見上げる。

「まるで新婚のようだよ」

「…うん」




 また、自然とキスする雰囲気になって。




「こんこん」




 ドアがノックされる音に気づいて、慌てて体を離した。






「エンヴィー、入るぞ〜?」

「ど…どうぞ?」

 エドワードが扉を開けて部屋を覗く。

「あ、起きたんだ?大佐が起こしに行ったのに遅いから…」

「あ…うん…俺がなかなか起きなくてさ」

 思いっきり作り笑いをしてベッドから立ち上がる。

「俺、リザさんの手伝いしてくるから、あとはよろしくな?」

「おいエドワード、お前今日牛乳は?」

 日課が気になって声をかけると、エドワードはひきつり笑いをした。

「あ〜!ごめん、夜飲むから!」

 そう言ってさっさと階段を下りて行ってしまった。




「可愛い弟だな?」

 大佐が笑いながら言った。

「…まぁね?」




 階段を降りて居間に行って。

「おはよう、エンヴィー」

 エドワードが作ったらしい、形の悪い目玉焼きをつつきながらジャンさんが挨拶した。




「おはよ…」

 恥ずかしくなって素っ気なく答えて、エドワードが残した牛乳を開けた。




「大佐、どうです?うちの可愛い娘」

「娘ェ?!」

 ジャンさんが笑いながら大佐に言って、驚いてしまった。

「お前のじゃないだろう、ハボック」

「え〜…でもうちの子ですよ?」

 元上司と部下だったらしい2人は親しげに話している。

「…娘じゃないってばぁ…!」

「可愛いから娘でいいだろ」

「よくない!」




 ぷぅ、と頬を膨らませていると、大佐が頭を撫でてくれた。

「エンヴィー、どちらでもエンヴィーはエンヴィーだよ」

「…でも…」




 16の男に娘は。




「ね、大佐。俺、女の子っぽい?」

「さぁ?顔は女の子と言ったらそのままスルー出来るだろうが…私は気にしたことはないからな」

 首を傾げて、優しく微笑む。

「…俺が女の子だと嬉しい?」

「今のままの君を愛しているから…考えられないよ」




 本気っぽいから、いいやと思った。

「大佐、早いけどお昼食べる?俺作るから」

「食べるよ。ありがとう。何を作ってくれるのかな?」

「……ぇ…と…」

 そんな大した物は作れないことに気がついた。

「す…スパゲティ?」

 恐る恐る大佐を見上げると、苦笑してる。

「それでいいよ」

「…ごめんね?大佐が喜ぶもの、作れるように練習する」

「何でもいいよ、君が作ったなら」

 大佐ならそう言ってくれるとは思ってたけど。

「ダメ。何が好き?食べたいの言って」

「…そうだなぁ…ハンバーグ…?」

「ハンバーグ?じゃあ練習しておくね」




 沢山練習して、色々作れるようになって、大佐の……大佐の?




「…新婚さんだな」

 ジャンさんがニヤニヤ笑ってる。

「…〜…っ…!」

「いつかなるなら、今からそうでもいいじゃないか」




 そうだけど。
 大佐の言うとおりだけど。




「…むぅ…解ったよぅ………スパゲティ作ってくる」




 キッチンに行ってパスタを茹でる。
 ミートソースを作って皿にあげたパスタにかけて。

 こんなんじゃお嫁さんになんかなれない。




「…お菓子なら作れるんだけどな」




 我ながら女々しい。

「ハイ、大佐」

 大佐が座っている前に置いた。

「いただくよ」




 微笑まれて、どうも悪い気がした。
 こんなのしか作れないなんて。