世界で一番早く朝が来る場所〜約束の場所へ〜@




 深い深い闇。
 射し込んだ光に手を伸ばして。
 それが朝だと気付いてから、もうどれくらい経ったのだろう。






「エンヴィー、お前朝起きるの遅過ぎじゃねぇか?」

 コレイユに来てから、1ヶ月程。
 毎日10時頃起きてくる俺に、エドワードが言った。

「あ?何か文句ある?」




 売りをやってた習性がまだ抜けてないらしくて、朝はどうも苦手だ。
 もっとも、今朝は電話の音で目が覚めたんだけど。




「別に?…つか…もう…この…瓶が!」

 大嫌いな牛乳と格闘しているらしいエドワード。
 エドワードは毎日1時間半くらい牛乳を前にして唸ってる。




「ほら、寄越しな」




 いつものように手を差し出してやると、心底嬉しそうに瓶を渡してくる。
 俺はキッチンへ行って牛乳にココアパウダーを入れ、エドワードに返す。
 それを受け取って一気に飲み干すのは、何故だろう。
 ミルクティーとココアは平気なくせに、そのままの牛乳はダメなんて、よく解らない。




「今日何かある?」

「特には。俺はリザさんの手伝いしに行くけど、お前はどうする?」

「家で留守番してる。掃除もしたいし、ジャンさんも心配だし」




 ジャンさんは家を事務所にして、相変わらず探偵業をしている。
 毎日猫を助けろだの指輪を落としただの、浮気調査なんて依頼が来てるけど。
 ここら一帯が高級住宅街だからか、気前のいい人も多くて生活には困らない。

 リザさんは家の裏側を花屋にした。
 小さいときからの夢だったというその店を持って、リザさんは毎日楽しそうに花を売っている。

 俺やエドワードはその手伝いをたまにして。
 アルフォンスは学校に通っている。

 こんなもんか、と近頃納得してきた。
 夢に描いていたのと、同じ。

 平穏な日々。




「んじゃ、俺行ってくるから、よろしくな」

 エドワードは立ち上がってさっさと花屋に行ってしまった。

「牛乳瓶くらいかたせよ」




 日常。




 食卓に乗っていた果物かごのバナナを朝ご飯代わりにして一本取って口に運ぶ。




 もう、秋。

 大佐は今頃、どうしてるんだろう。




 2週間前に一度、会いに来てくれた。
 浜を貝殻を拾いながら散歩していたら、大佐が前から歩いてきて。

 他愛もない会話をして…キスをして、別れた。

 それだけで満足しているわけじゃないけど。
 逢えれば、それだけでもいいと思える。




「元気にしてるかな」

 たまに夜電話が来る。
 近況を報告してくれて…あとは「おやすみ」って告げるだけだけど。

 声を聞くと、心が暖かくなる。
 元気なんだなって、安心できる。




「逢いたい…な」




 愛する人。
 愛してくれる人。

 俺のすべてをかけて愛してる。