世界で一番早く朝が来る場所O
「大佐…」
何だか、異様にドキドキする…。
「どうした…?」
声をかけられて振り向いた大佐に、抱きついた。
「…?」
「大佐…俺…っ」
「ピンポーン…」
何やら、ルームサービスが来たようで、言葉は切れてしまった。
「ちょっと待っていなさい」
頭を撫でられて、何だか切なくなった。
「…運悪い…」
運ばれてくる料理を眺めた。
ビーフシチューなんて…久し振りに食べる。
「さぁ、食べようか」
準備ができて、テーブルに向かう大佐の言葉に従い、俺も座る。
「…さっき、何を言おうとしていたんだ?」
訊ねられて、スプーンを置いた。
「…俺、大佐が…好きだよ」
勇気を出して、はっきりと、初めて俺の気持ちを言ってみた。
大佐は驚いていたけど…ふっと笑った。
「ありがとう」
ありがとう、で済む問題なんだ?
「大佐は、俺を愛してるんでしょ?」
「…あぁ」
「…なら…」
抱きしめてキスするだけじゃなくて。
「両想いだよね?」
「そうだな」
嬉しそうな顔をする大佐。
「……食べ終わったら…ちゃんと言うよ」
はぐらかされてる気がしてきたけど、きっとそんなんじゃない。
気持ちが足りてない。
俺の。
「そうか」
大佐はさっさと食べ終わって、俺の顔を見ていた。
好き。
好きだけど、怖い。
大佐に拒否されることが。
「…美味しいか?」
しばらくして、そう尋ねられた。
「…うん」
「それは良かった」
久し振りに食べたら、予想以上に美味しかった。
「大佐は、ビーフシチュー、好きなの?」
「…あぁ…好きというか…君が好きかな、と思って」
「俺のため…?」
「…あぁ…」
苦笑しながら、大佐は何かを思い出すように宙を見つめた。
「ふと、浮かんだんだ…君の笑う顔が」
それは…10年前を、思い出してるの?
「…大佐は…どうして俺が好きなの?」
食べ終わった皿にスプーンを置いて、尋ねた。
「…一目惚れだよ。前も言っただろう?」
「嘘…」
「…本当だよ。何も覚えていないからこそ、言える。私は君が好きだ。それ以上に、何を求める?」
好きでいてくれるのは…心から嬉しい。
でも…一体俺のどこがいいの。
「俺は、大佐に愛される権利も資格も何もないんだよ?」
「私が愛するんだし、私には権利も資格もあるだろう」
「好きになって…後悔…しない?」
今更、遅いだろうけれど。
「しない…君を諦める方が、私には辛いよ」
言い切る大佐の眼を見たら、嘘じゃないって、解った。
俺は今更後悔なんかできず。
したくないのも事実。
大佐が、欲しい。
「大佐…俺、大佐が…欲しい」
立ち上がって、向かい合わせに座っていた大佐の横に立ち、初めて俺からキスをして言った。
「…エンヴィー…?」
「大佐が迎えにきてくれるの…待ってる。今ここでする必要なんかないのも解ってるんだ」
だけど、気持ちはもう限界。
大佐を受け入れたいって思ってから、胸が痛くて仕方ないのは。
大佐を欲しいと思うのは。
「…今まで、望んだことなんかなかった。……生きていくために……うぅん、いつになるか解らない、自由な自分を夢見て…SEXしてた」
こんな汚れた俺だけど…初めて好きになった人に。
また逢えたから。
両想いだから。
「お願い…大佐」
何だか、涙が溢れてきた。
「俺…こんな気持ち、初めてだから…言いたいことなかなかうまく伝えられないけど…」
好きな気持ち、したい気持ち、嘘じゃないから。
「…たい…っ…」
言葉を続けようとして…見下ろしていた大佐に腕を引かれて口付けられた。
「…君は…嫌がると思っていた」
唇が離れて。
抱きしめられて耳元で聞こえた言葉。
「…嫌だよ…?」
これは嘘じゃない。
俺は男だから、本来は受け入れるはずのない身体。
それでも、大佐にならと…望む。
「でも…大佐となら…全部忘れて…俺になれる」
「50」と呼ばれて数え切れない男に抱かれていたあの頃。
「だから…」
「もう、言わなくていいよ…エンヴィー」
子供を抱きしめるみたいに、ぎゅってされて…嬉しくて。
止まっていた涙がまた流れた。
時間なんて関係ない。
記憶なんて関係ない。
立場なんて関係ない。
大佐を汚すこと。
傷つけるのが、怖かった。
俺のせいで迷惑をかけたくなかった。
だから、逃げてた。
でも、認めたくなった理由は。
「俺、大佐に言わなかったことがある」
ベッドルームにお姫様だっこされて向かうとき。
耳元で囁いてあげた。
「俺、昔大佐に言ってたんだ」
大切なこと。
「大きくなったら、大佐と結婚する、って…お嫁さんになる、って言ってたの」
叶うなら、壊れないで欲しい夢。
見つけた光。
離れたくない熱。
シーツの海に溺れて。
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