世界で一番早く朝が来る場所F
目が醒めたときに来る脱力感。
夢を見たあとはなおさら。
それがいいものだと、その日一日その事ばかり気になる。
今日もそうだった。
小さいとき、好きな人が居たこと。
アレは6才の時。
一ヶ月避暑地に滞在していた夏。
その時、あの人に出会った。
俺よりも10は年上の人。
男だったけど、多分アレは初恋。
遊び相手の居ない俺の相手をしてくれた。
優しくて、頭がよくて…そんな彼が大好きだった。
俺は、まだ子供だったから、何も考えずに、その人に「お嫁さんになる」と言っていた。
今思えば、本当に馬鹿な奴。
彼の名前は何といったか。
確か…ロイ…ロイ。
ロイ?
苗字は忘れたけど、確確かにロイだった。
ロイは大佐の名前だ。
雰囲気は確に似ているかも知れない。
でも、違う。
まさか、ロイが大佐なわけはない。
だって、彼には婚約者がいたはず。
いや、もう結婚していたかもしれない。
金色の髪をした、綺麗な人。
子供の言うことだからと相手にされなかった俺の初恋。
でも、ホントに好きだったんだ。
好きだった。
「パーティーのお供に連れていきたい」
大佐と別れて一週間後にそんな依頼が来た。
仕事だし、断る理由もなく、引き受けた。
政治家のパーティーらしい。
そんなトコに俺を連れていくのもどうかと思うけど、気にしないようにした。
俺を女として連れていきたいらしくて、淡いピンクのドレスを着せられた。
胸がないのはとりあえずゴマカシて。
いざ、会場へ行けば。
人の多さにめまいがした。
何も話さなくていいから笑っていろ。
その言いつけを守って依頼主について回っていた。
しばらくすると、自由に回っていいと言われた。
お腹も空いているし、と料理の並んでいるテーブルに近付く。
皿を取ろうと手を伸ばして、他の人の手とぶつかった。
「すみません…」
顔を上げた途端目に入ったのは、一週間振りに見た、黒い髪の、大佐。
「エンヴィー…」
大佐も驚いて、自分でつけた俺の名前を呼んだ。
「その格好は…」
「…し…仕事だよ」
思わず顔を背けて答えた。
「仕事…」
大佐は、辛そうな顔をした。
何でそんな顔、するんだよ。
「それじゃ…」
大佐から離れようとすると、手を掴まれた。
「な…」
「こっちへ来い」
そのまま会場にあるバルコニーに連れだされた。
「何すんだよ、いきなり…」
腕を払い除け、顔を背けて大佐から離れた。
「君に逢うとは思わなかった」
「そんなの、俺も一緒だよ」
「私は、君に逢いたいと思っていたよ」
その言葉が、胸をちくんと刺した。
「どうすれば、君はこんな仕事をやめる?」
やめ方なんか知らないし、やめるにもやめる理由が見付からない。
「大佐は、俺にやめて欲しいんだ?」
「あぁ」
それは、どうして?
「どうしてやめて欲しいわけ?」
「君が知らない男に抱かれたり、一時的にでも他の誰かのものになるのは許せない」
大佐は、俺の何?
どうしてそう思うの?
「…やめられない」
そう答えたとき、大佐が驚いた顔をした。
「俺にやめて欲しいなら…自分のものにしたいなら、俺の一生を買えばいい!」
そう叫んで、その場をあとにした。
もう、ホントに逢えない。
逢いたくない。
大佐は俺を好きでいてくれた。
それだけで充分。
明けない夜が、始まった。
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