世界で一番早く朝が来る場所E
娼館に着いてすぐいつもの服に着替えた。
こんな場所に、白いワンピースなんか似合わない。
それ以前に、大佐の純粋な気持ちを汚してしまいそうで。
名前しか知らない、あの人。
逢いたいって言われたけど、逢い方も解らない。
立場が違いすぎる。
仕事が始まってすぐ、俺は昨日とは違うお偉いさんに買われた。
「ライラ」
そう呼ばれたとき、胸に何か熱いものが込み上げてきた。
涙が出そうになって、誤魔化すために鳴いていた。
ねぇ、大佐。
俺はこんな奴だから、やっぱり逢えない。
大佐が思うほど、大佐に思われるほど、綺麗じゃない。
名前も知らない男に抱かれることしか知らない、最低な奴だよ。
だから、お願い。
俺のことは忘れて。
大佐に似合う、本当の運命の人を探して。
逢うために生まれてきた、綺麗な人を。
俺以外の、誰かを。
その方が、きっと幸せになれるはず。
今日の客は何やら絶倫らしくて、さすがの俺も疲れたけど。
金を受け取って、足早に娼館に戻った。
腰もだるい、体になかなか力も入らない。
でも、一人で寝たかった。
安らぎを求めていた。
仕事がない昼間は、大抵広い空を見上げて過ごす。
たまに外に出ることはあっても、ただ散策するだけ。
それが日常。
夜は夜で、知らない男たちに抱かれる。
身を任せるのは望んでじゃない。望まれて、だ。
嫌でも、生活に困らないからこのままでいいとあの時決めた。
嬉しいことなんか一度もなかった。
小さい頃のことはあまり覚えていない。
名前も、どこに住んでいたのかも。
ただ、良家の子息だった俺を、両親が借金のために売り飛ばしてくれたこと。
それだけはずっと覚えていた。
大佐は、俺を懐かしそうに見る。
何も懐かしいことなんかないのに。
気付いてた。
気付きたくなかったから、気付かない振りをしていた。
俺は、大佐に惹かれてる。
大佐が、俺を俺として見てくれているから。
性欲の対象でも、金儲けの道具でも、軽蔑する存在でもなく。
「エンヴィー」として俺を見てるから。
最初からそうだった。
だからよりいっそう、あの人を好きになるわけにはいかない。
壊れたら辛いと解っているなら…最初から拒絶した方が辛くない。
大佐は、好きになっちゃいけない人なんだ。
|