世界で一番早く朝が来る場所C




「立てるか?」

 軍人は俺の腕を掴んでそう言った。

「立てる」

 俺はふらふらしながら立ち上がった。

「その前に…服を買ってやろう」

 突然、意味の解らないことを言われた。

「その前に?」

「美味い店があるが、少々高い。それなりの格好をしていなくては入れてもらえないからな」

 どうやら、この軍人は俺を高級レストランに連れていくつもりらしい。

「いい、自分で何か買って食べる」

 娼館を出る前に、もらった金がいくらかあった。
 ただし、遣わなければ返さなくてはいけないし、遣ったら釣りを返さなくてはいけない。

「遠慮するな」

 そいつの後に、ついていくしかなかった。

「ショーウィンドウに白いワンピースドレスと靴があるだろう。この子のサイズに合うものをくれ」

 手を引かれて連れてこられた、明らかにブランドものの店で、店員にそう告げる。

「ちょ…待てよ。俺、男だし…」

「気にするな。男だろうが女だろうが、似合うものを着るのは悪いことじゃない」

 店員が出してきた服を手渡され、試着室に押し込められた。

 どうなっているのか解らないまま、服を着替えた。




 着慣れたパンツとシャツを脱いだそのままにして、試着室のドアを開いた。

「これでいいのか?」

 靴も履いて、女ものなのに、何故か違和感なく着れる自分がある意味不気味だった。




「よく似合ってる。ノースリーブにして正解だったな」

 嬉しそうにそう言う彼は、店員に簡単なメイクをさせるよう指示してさっさと会計を済ませた。
 俺は、脱いだ服を袋に入れてもらって、何だか夢を見ているような気持ちでメイクをされていた。

「それでは行こう」




 しばらく歩くと、高そうなレストランに着いた。

「高そう」

「まぁ、一般的には高いだろうな」

 店に入ると、窓際の席に通された。
 俺は、軍人が何か注文しているのを、ただ見ていた。

「…何でこんな店に俺を?」

「腹が減っていたんだろう?なら遠慮することはない」

「…どうして、奢ってやろうだなんて?」

「困っている人は見捨てられない主義でね」

 そんなことをさらりと言うなんて、自惚れた奴としか思えない。

「返すアテなんかないよ」

「好きでやっていることだ。構わない」

 ……変な奴。