世界で一番早く朝が来る場所B
ふと、腕に暖かい感触が蘇った。 そんなに強くもなかったのに、簡単に思い出せる。 もう、逢うことなどないだろうし、逢いたくなんかない。
大体、名前を訊いてどうしようってんだ。 買うのか? でも、あいつは俺がそういう仕事をしてるとも思ってなかったし、驚いてた。 じゃあ、何? ナンパでもないだろうし、キャッチでもないだろう。 …不思議と、あの軍人のことを考えていると落ち着く。
いつか自由になる、これだけは、誰にも変えさせない。 娼夫は俺の天職かってくらい体に馴染んでるけど、そこに心がないから、ただ辛いだけなんだ。
ぼぅっとしていると、日の光が遮られた次の瞬間、頭上で聴き覚えのある声がした。 「…軍人…」 逆光で顔がよく見えなかったし、軍服ではなかったけど、昨日のあの軍人だった。 「大丈夫か?具合いでも悪いのか」 そう言って、そいつは体温を測るため、右手を俺の額に当てた。 昨日と同じ。 「熱はないようだな」 手を外して、安心したように俺を優しい目で見る。 「…熱なんかない」 やっと口を開いてそれだけ告げた。 「なら、どうしてこんなところに座り込んでるんだ?」 「…腹減った」 何だか急に恥ずかしくなって、うつ向いて答えた。 「用意されてたのに何も食べないで出てきたから…」 何でこんなこと、こいつに話すんだろう。 |