グラスに口づけしてごらんよ
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---2005/1/10

「大佐、起きてください」

 優しく揺さぶられて、耳に響く声に目が覚める。

「………また寝ていらしたんですか」

 顔を上げれば、金色の髪に琥珀色の瞳。
 自分の有能な補佐官。

「…中尉、今何時だね?」

「8時を過ぎました」

 今日は誰とのデートの約束もない。
 いつもならそれに合わせて職場を去るのに。

 どうやら、あと残り3枚というところでダウンしたらしい。

「あと3枚ですか」

「あぁ…そのようだ。すぐ終わる…待っていてくれたまえ」

「はい」

 端的な会話を交わし、書類に目を落とす。

 中尉は自分の机に向かい、自分の仕事をしていた。




 十数分後、終わらせた書類を中尉に渡した。

「すまないね…こんなはずではなかったんだが…」

「いいえ…気になさらないで下さい」

 そう言って書類を受け取って目を通し、封筒に入れる。
 そんな毅然とした態度が、いつも私と目を合わせないためのような気がしてならなかった。

 あの日から。




 帰宅の準備を始める中尉に、声をかけた。

「中尉、今夜は空いているかな?」

 振り返って、何のことか、と首を傾げて言った。

「特に用事はありませんが?」

「君も私も、明日は非番だ。一緒に食事でも…」

「大佐は仕事中に眠ってしまうほど疲れてらっしゃるようですから、今日は帰ってゆっくり休んだらどうですか?」

 尤もなことを言われて怯むが、勇気を振り絞ってもう一度言った。

「いや、是非君と一緒に食事がしたい!」

 中尉は驚いたような顔をしていた。

「………はぁ………いいですけど……」

 別に断る理由もないし、と言いそうな顔で答えた中尉。

 OKをもらえた事に喜びはしたが、この後が問題だった。

「では、早く行きましょう、大佐」

 すでに仕度を終えた中尉が言う。

「あ…あぁ、君もロッカーに行くだろう、玄関で待ち合わせよう」

「解りました」




 中尉は頷いてさっさと行ってしまう。

「………はぁ……」




 溜息は、そっけない思い人への思いのようだった。




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