醒めない夜を抱いて
「いつまでって、いつまで?」 エンヴィーは、目の前で優雅にコーヒーをすするロイに尋ねた。 「とりあえず、私の気が変わらない間だな」 「じゃあ、大佐の気が変わらないことを祈るよ」 2人が出会ったのは1週間前。ロイがたまたま通りかかった公園だった。 「大佐も、暇だよね。こんな俺みたいな正体も分からない奴を自分の家に連れ帰るなんてさ」 「私は、気に入ったものなら持ち帰るよ」 「俺が気に入ったってわけ?」 「そういうことだ」 ロイがそんなことを言っていられるのは、自分の正体を知らないからだと、エンヴィーは解っている。 「寝る場所がないから木の上で寝てた」 そう告げると、ロイの反応はこうだった。 「いつまでも居ればいい」 「なら、ずっといる」 エンヴィーはそう言いたくなった。しかし、言えなかった。 あまり深く交わりすぎると、自分のためにもろいのためにもならない。 「あ、でも、そっか」 自分のためにならないのは少々困るが、許容範囲であれば、ロイを貶めるのも楽になる。 「何が、そっか、なんだ?」 「こっちの話」 ロイが新聞に目を落としたまま尋ねるのに対し、エンヴィーはにっこり笑った。 「ね、大佐」 「どうした?」 新聞から目を外さないで、ロイは言った。 「抱いてよ」 ぴきん。そんな音がしたのではないかというくらい、おかしな沈黙が流れた。 「今…何と…」 「だから、抱いてよ」 エンヴィーは、相変わらず顔を上げないロイの左手から新聞を外して、その手を露わになった左胸に当てた。 「この体、大佐の好きにしていいから…」 ロイが顔を上げると、エンヴィーはロイの唇に、自分のそれを重ねた。 触れるだけのキス。ゆっくりと唇を離すと、エンヴィーを見つめたままロイが口を開いた。 「すまないが、私は君を抱きたいという目的で連れ帰ったわけではないよ」 「でも、今は関係ないよね」 エンヴィーは椅子に座っているロイの膝に、ロイと向かい合うように座った。 「男だから、嫌?女なら抱いてくれるの?」 「性別は関係ないな。好みかどうかだ」 「…好みじゃない?」 小さく溜め息をついてロイは言った。 「好みではない人とキスをするほど無節操ではないよ」 「…俺も…」 そう言うと、エンヴィーは今度は深く深く、ロイに口付けた。
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