醒めない夜を抱いて




「いつまでって、いつまで?」

 エンヴィーは、目の前で優雅にコーヒーをすするロイに尋ねた。
 本来なら、敵である自分がロイとこんな風に過ごすなど、考えられない。

「とりあえず、私の気が変わらない間だな」

「じゃあ、大佐の気が変わらないことを祈るよ」

 2人が出会ったのは1週間前。ロイがたまたま通りかかった公園だった。
 突然、エンヴィーが落ちてきたのだ。
 木の上で寝ていたところずり落ちてしまったのだが、けがもなく寝続けるエンヴィーをロイは連れ帰った。
 そして今に至る。

「大佐も、暇だよね。こんな俺みたいな正体も分からない奴を自分の家に連れ帰るなんてさ」

「私は、気に入ったものなら持ち帰るよ」

「俺が気に入ったってわけ?」

「そういうことだ」

 ロイがそんなことを言っていられるのは、自分の正体を知らないからだと、エンヴィーは解っている。
 だからといって正体を明かす気もないし、ここから去る気もない。居心地がいいのだ。
 無駄に干渉もせず、寝床を提供してくれるロイ。

「寝る場所がないから木の上で寝てた」

 そう告げると、ロイの反応はこうだった。

「いつまでも居ればいい」

「なら、ずっといる」

 エンヴィーはそう言いたくなった。しかし、言えなかった。
 自分の立場と目的。
 そしてロイの立場と使命。

 あまり深く交わりすぎると、自分のためにもろいのためにもならない。

「あ、でも、そっか」

 自分のためにならないのは少々困るが、許容範囲であれば、ロイを貶めるのも楽になる。

「何が、そっか、なんだ?」

「こっちの話」

 ロイが新聞に目を落としたまま尋ねるのに対し、エンヴィーはにっこり笑った。
 そしてパジャマ代わりに、とロイが与えたエンヴィーには大きすぎるシャツのボタンを外した。

「ね、大佐」

「どうした?」

 新聞から目を外さないで、ロイは言った。
 エンヴィーはおもむろに近付き、答えた。

「抱いてよ」

 ぴきん。そんな音がしたのではないかというくらい、おかしな沈黙が流れた。

「今…何と…」

「だから、抱いてよ」

 エンヴィーは、相変わらず顔を上げないロイの左手から新聞を外して、その手を露わになった左胸に当てた。

「この体、大佐の好きにしていいから…」

 ロイが顔を上げると、エンヴィーはロイの唇に、自分のそれを重ねた。

 触れるだけのキス。ゆっくりと唇を離すと、エンヴィーを見つめたままロイが口を開いた。

「すまないが、私は君を抱きたいという目的で連れ帰ったわけではないよ」

「でも、今は関係ないよね」

 エンヴィーは椅子に座っているロイの膝に、ロイと向かい合うように座った。

「男だから、嫌?女なら抱いてくれるの?」

「性別は関係ないな。好みかどうかだ」

「…好みじゃない?」

 小さく溜め息をついてロイは言った。

「好みではない人とキスをするほど無節操ではないよ」

「…俺も…」

 そう言うと、エンヴィーは今度は深く深く、ロイに口付けた。




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続く???
前の携帯に入ってたデータを頑張って写しました!!
しかしながら、この先も書いたはずなのに消えていて…(汗)

とりあえず、息抜きのロイエンでした〜!!