「雨…か…」

 久しぶりの休日、街へ出かけてみた。
 しかし、突然の雨によりふらりと入った喫茶店から出られなくなってしまった。

「濡れて帰るのも、癪だな…」

 ウェイトレスにコーヒーのお代わりを頼んで窓の外を見やると、雨の中傘もささずにとぼとぼと歩いているエンヴィーを見つけた。

「エンヴィー…?!」

 思わず立ち上がり、喫茶店を出た。



「雨…」

 エンヴィーは何をするでもなく、歩いていた。
 突然雨が降り出したのも気にせず、歩き続けていた。

「今頃、大佐はどうしてるかな」

 雨の日は得意の焔を出せない愛しい恋人。
 日常生活には必要はないが、肝心なときに出せないと命に関わる。

「でも、殺させやしないし」

 そんなことを考えていると、突然後ろから左腕を捕まれた。



「エンヴィー!」

 振り向くと、大佐がいた。

「…大佐…?」

「近頃ちっとも顔を見せないから…心配していたよ」

 息を切らしているところを見ると、見かけて大慌てだったに違いない。

「…今ね、丁度大佐のこと考えてた」

 笑いながら言ってあげると、左手を握ったまま、歩き始めた。

「…何?」

「私の家に行こう」

「…何で?」

「そのままでは風邪をひく」

 別にいいのに。
 風邪なんかひかないのに。

「ねぇ、大佐」

 ぱしゃぱしゃ水を鳴らしながら歩いて。

「大佐が危なくなったら、俺が守ってあげる」



 あんたに会えてよかった。

-fin-