降り出した雨B

 思わず口付けたくなる顔。
 顔をゆっくりと近づけた。

「…っん……」

 寸前にエンヴィーが寝返りを打って体が反対を向いた。

「……するなってことか…?」

 苦笑して起き上がる。
 窓の外を見れば、雨は止んでいて。
 眩しい陽の光が射していた。

「…雨…止んだな」

 呟いて、ベッドを降りる。

 外の草木はまだ濡れている。
 水滴な太陽の光を反射して眩しい。

 こんな風にエンヴィーと朝を迎えるなんて、思いもしなかった。




 エンヴィーの耳元で叫んだ。

「朝だぞ、起きろ、エンヴィー!」

「ほぇあぅ?!」

 ビクッと体を震わせてエンヴィーが起き上がった。

「何?!」

「朝だから起こしたんだよ」

 ちょっとだけ涙目になって、エンヴィーが俺を見た。

「…もっと優しく起こしてよ…」

「どんな風に?」

 エンヴィーは首を傾げた。

「朝よ、お・き・て☆みたいな?」

「バカかお前」

 何を間違った新婚マンガみたいな。

「…おチビさんの好きそうなのを狙ったのに…」

 好きじゃないし。




「……ねぇ……おチビさん…」

 エンヴィーが呟く。

「…好き…だよ」

 突然の告白。

「ぇ?」

「好き」

 真剣な顔で、そう言った。

「俺を…?」

「うん」

 微笑むエンヴィーに俺は何も言えない。

「…ずっと…言いたかったんだ…」

 ただ、見つめるだけ。

「おチビさんが好き」

「……ぁ…ぅん…ありがとう…」

 何か言わなくちゃと、そう口を開いて言った。

「…おチビさんの答えは…いつでもいいから聴かせてね」




 自分でも解る。
 今はちゃんとした答えなんか出来ない。

「いつかするよ」

 それはいつになるか解らないけど。

「いい返事がいいな」

 きっとそれは本心。
 俺が迷わずにあいつを選べたら。

 きっと幸せにする。




「じゃ、俺帰るね…お父様が待ってる」

 どこか淋しそうに笑うエンヴィー。

「気をつけろよ」

 敵だと解ってはいるけど。

「またねおチビさん」

 頬に、柔らかい感触。

「ぇ…」

 エンヴィーを見れば悪戯っぽく笑って。

「バイバイ」

 何も言えないままあいつが消えていくのを見送った。




「…またな…」

 呟いて見上げた空。

 降り出した雨はいつか止む。




 でも、この想いはまだ続く。

 まだ、ずっと。




END