降り出した雨A




 シャワーを浴び終えたエンヴィーは、ベッドに横になるエドに近づいた。

「…おチビさん、出たよ。ありがとう」

 しかし返事はない。

「おチビさん?」

 顔を覗き込むと、眠っていた。

「…え…」

 無防備な寝顔で。

「…寝ちゃってる…」

 そっと頬に触れる。
 暖かい頬。

「…おチビさん…」

 エンヴィーが耳元で囁くと、エドは小さく身じろぎした。

「…いいの?俺を警戒しなくて…」

 敵だと思っているくせに。




 敵ではないと言った。
 思いたければ思ってもいい…でも、そうではないと思わせて欲しい。

 俺たちの目的は、おチビさんを利用することだけど。

「知らなかったらよかったのにね」

 敵だとか敵ではないとか…俺たちは曖昧な存在。
 災いをなす存在ではあるけれど、それは俺が望んだわけではないから。

「生まれたら、人造人間だったんだ」

 呟いて、眠っているおチビさんの隣に横になった。
 丁度顔がよく見える。

「…睫も金髪…」

 穏やかな時間。

「おチビさん」名前を呼ぶと、何故か胸が熱くなる。

 それは何故?

 好き…だから。

「……きっと俺は敵なんだ」

 なら、一緒にいてはいけないの。

 いくらおチビさんを好きでも。

「離れてしままうとき…辛いから」

 耳を澄ませば、降り続く雨音。
 いつから降り出して、いつ降りやむの?

「解りたくなんかないね…俺の気持ちみたいで」

 いつから好きになったんだろう。
 いつこの「好き」は終わるのだろう。




 気がつくと朝だった。
 胸に誰かの手が乗っていて、目を向ければエンヴィーが眠っていた。

「え゛」

 一瞬何が何だか解らないまま口をぱくぱくさせる。

「……あぁ…」

 思い出すと簡単。
 俺はエンヴィーを待っている間に眠ってしまったらしい。

「……いい匂い…」

 宿にあったシャンプーを使っていて…俺も同じのを使ったはずなのに。
 エンヴィーから微かに香るのは、優しい花の香り。

「…女の子みたい…」

 寝顔は女の子のように可愛い。




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