降り出した雨@

 雨が降り出した。

 宿無しのあいつはどこで雨を凌いでいるんだろう。
 ふと、そんなことを考える。

 雨垂れは夜になると激しさを増した。




「おチビさん」

 窓の外から、声が聞こえて顔を上げた。
 俺を「おチビさん」なんて呼ぶのはあいつしかいない。

「エンヴィー…」

 窓を開けると、ずぶ濡れになったエンヴィーが笑っていた。

「遊びに来たよ」

「…風邪ひくぞ…」

 部屋に入ったエンヴィーにタオルを渡して溜息をついた。

「おチビさんに会いたかったの」

 微笑みながら濡れた体を拭き、言った。

「エンヴィー、あのなぁ……俺たちは敵同士なんだから…」

「そんなのおチビさんの偏見。別に俺は敵なつもりないし」

 驚いたまま、何も言えなかった。

「タオルありがと」

 あまり何も考えずにエンヴィーからタオルを受け取った。

「…お前、変な奴…」

「そう?ん〜…ありがと…変なつもりはないけどね」

「別に俺、誉めてないから」




 変な奴。
 突然来て、敵じゃないとか言って。

「…お前、俺の何なわけ…?」

 敵ではないのなら、何なのか。

「何だろうね?考えてみてよ」

「お前が言えよ。俺が聞いてんだから」

 エンヴィーは口を開きかけたが、それは答えを出さずに嚔に変わった。

「ふぇっくちょ!」

「は?」

 体は拭いたが、服が濡れたままだ。

「あ…これ」

 トランクから服を出して渡した。

「ぇ?」

「シャワー浴びろ」

 答えを知りたかったけど、それはいつでも聞ける。

「うん」




 シャワー室に向かうエンヴィーを見送った。

 エンヴィーが見えなくなると、俺は溜息をついてベッドに倒れ込んだ。

「あいつ可愛いし……無防備だよな」

 隙はあまり見せないけれど、それでも。

「…俺の何なわけ?」

 敵だと、思っている。

 簡単に俺を「殺す」って言える。

 太股の入れ墨。
 時々冷たくなる瞳。




「…敵としか…思えないじゃないか」

 窓を見れば、開けっ放しのカーテン。
 まだ雨は降っていた。

「雨」

 まだ降る。

「…ていうかあいつ靴履いてないし…」

 呟いて目を閉じた。




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