evergreen*5*







 それから3人で避難して、ロンドンを離れた。

 その間、俺はずっと父さんの手を握って離さなかった。

 おチビさんはつまらなそうだったけど、何も言わなかった。

 グリードもラストもプライドもグラトニーもスロウスも居なくなった。
 ラースはどうなったか知らない。

 俺はここにいる。

 家族…と。

 だけど、まだ甘えられない。

 もう少ししたら、素直に出来るようになるのかな。

「…父さん」

 小さな声で、呼んでみた。

「うん?」

「あのね…」

 耳打ちをした。

「…大好きだよ」

 そう言って、恥ずかしくて父さんから離れた。

「インウィディア?」

 父さんは不思議そうな顔をしていた。

 おチビさんの傍に寄って、何でもない、と照れ笑い。

「…エンヴィー?」

「何でもないよ、おチビさん」

 おチビさんはそっか、と言って首を傾げた。

「…俺…おチビさんが傍にいると…何だか落ち着くよ」

 しばらく歩いていて、思いついたから言ってみた。

「は?」

「ホントだよ」

 それは本当に不思議な感覚。

 今まで…エンヴィーになってから家族らしい家族なんていなかった。
 母さんも…ラストたちも…仲間と言えば仲間だった。
 でも家族じゃない。

 父さんと、弟。

 こんな風に一緒に過ごす未来なんか来ると思ってなかった。

 2人を憎んでいた。
 だから、不思議だ。

「おチビさん」

「何だよ」

「ありがとう」

 意味が解らない、という顔をしてた。
 解らなくていいよ。
 きっと一生言わない。

「変な奴…」

「お互い様だよ」

 俺を助けに来たりするんだから。






 3人で、色んな街を回った。
 これからどうしよう、とか。
 そんなことを考えながら。

 いつも宿かアパートを借りるくらいで、定住なんかしなかった。
 でも、楽しいからそれでも良かった。

 日払いの仕事をして、父さんとおチビさんが稼いでた。

 俺もやるって言ったのに、2人は絶対にやらせようとはしなかった。

 お前は不器用だから、とか…これは危ないから、とか。
 確かに…言われて言い返せはしないけど…でも、それはかなりつまらない。

「俺も働きたい」

 改めて、ある日そう2人に告げた。

「ダメ」

 おチビさんが呆れながら即答。

「どうしてダメって言うのさ」

 2人を待ってるだけなんて寂しいのに。

「インウィディア、ダンテに世間のことは教えてもらったんだろう?」

 父さんが溜息をついて口を開く。

「だがここはあの世界とは違う」

「…そりゃ世間知らずだけど…!」

「お前が思うほど働くのは容易じゃないんだ」

 今まで確かに働いたことはないけど。
 そう言われると、苦しい。
 2人の力になりたいのに。