evergreen*4*




「俺を見つけてどうするつもり?お前となんか一緒に行かないからな」

「…何でそんなに嫌がるんだよ」

 おチビさんは呆れていた。
 もう、向こうの世界でのことは気にしていないのか。

「一緒に親父のとこに帰ろう。逢いたいんだろ?」

「…俺は…あいつを殺したいんだ…それでもいいなら行ってやるさ…」

 おチビさんはしばらく黙った後言った。

「お前が親父を殺せるならすればいい…出来ないとは思うけどな」

出来ないわけはない。
ただの人間なんだ。
俺の力が衰えていてもそのくらい出来るはず。

「…とりあえず…行くぞ」

躊躇いはしたけど、俺はおチビさんについていった。




「…俺はお前を弟だなんて思ってないからな…」

「何でだよ」

「人造人間だし」

「関係ないだろ」

「ある」

「お前の元が俺の兄貴ならお前は兄貴なんだよ」

「知らない」

「アルも弟だぜ」

「いらない」

 変な会話を交わしながら、ホーエンハイムへの道を進んでいく。

 解らない。
 俺は…こいつを憎んでいたのに。
 今はいてくれて安心する。

 嫌いなのに。

 父さんと同じくらい。

 大嫌いだったのに。

 あんなに。






 ホーエンハイムの前に立つと気まずくて…どうすればいいか解らなくて…顔を逸らすしかなかった。

「エンヴィー」

「何だよ」

 名前を呼ばれて睨みつける。

「…すまなかったな」

「何がだよ」

 悲しそうに言うホーエンハイムは、何だか自分が想像していたよりずっと小さいような気がした。
 本当のことを言えば、殺そうなんて気はなかった。

「インウィディア」

 Invidia。
 俺の名前。
 忘れていた名前を呼ばれた。

「…今更父親面か?」

 何をされても文句なんかないって顔がムカついた。

「俺はずっと…お前を恨んできたんだ」

 父親のホーエンハイムが…死んだ俺を錬成したのに。
 突然姿を消して。
 俺とあの人を捨てた。

 愛してなかった?
 俺が…本当のインウィディアじゃないからいらなかった?

 知らない場所で新しく家庭を作って。
 俺じゃない子供を可愛がって。

 悲しいじゃないか。

「…っ…」

 涙が溢れてきた。
 これ以上泣かないようにと、唇を噛みしめる。

「私を恨むのは…仕方ない。私が悪かったんだ」

 近付いてきたホーエンハイムに頭を優しく撫でられた。

「だが…お前を忘れたことはないよ」

 我慢していた涙は勝手に流れ始めた。

「……っ……ぅ……父さん…」

 抱きついて泣きたかった。
 でも、恥ずかしくて出来なくて。

「ごめんな」

 そう言った父さんが、優しく抱きしめてくれた。

 力強いのに優しい腕。
 大きくて逞しい胸。

「…っ…ふぇ…」

 大声で泣けはしなかったけど、ずっと泣き続けた。

 憎んでたなんて嘘だ。
 ただ羨ましくて…妬ましくて。

 あの人が…母さんが俺を計画に引き入れなきゃ。
 父さんがどうしていたとか…知らなかったのに。