evergreen*2*




気がつくと、知らない場所にいた。

「ここは…どこだ?」

 何かが燃えるにおい…何かが崩れる音。
 それは火事の様子。

「ここが…扉の向こうの世界…」

 倒れていた俺は、起き上がる。
 何故かいつものお気に入りの姿に戻っていた。

「…ホーエンハイムはどこだ…」

 そのために来た。
 あいつが…エドが言ったから。
 父さんが…ここにいるって。

 でも、どこにいる?
 何も解らないこの世界でただ一人。

「…どこにいる…」

 辺りを見回しても誰の姿もない。
 燃え盛る炎に崩れる家ばかり。

「…父さん…」

 泣きたくないのに。
 淋しくなんか…悲しくなんかないのに。

「…逢いたい…」

 そう願ってしまった。
 慌てて溢れそうになる涙を堪える。

 父さんは…ホーエンハイムはこの世界にいる。
 きっといる。

 だから…あてはなくても探そう。

 このままここにいても埒があかない。

「…聞きたいんだ…」

 俺を…嫌いかどうか。






「エンヴィー…!エンヴィー…!どこだよ、エンヴィー!」

 街の中を探す。
 何故か居るような気がして。
 あいつの名前を呼び続ける。
 そういえば…本当の名前はあるのだろうか。
 エンヴィーは人造人間としてのあいつの名前だときいた。

「父さんは…前の名前については何も言わなかったけど…」

 人造人間の前の…人間だったときのあいつのことは何も知らない。

「知りたい…な…」

 どうしてだか解らないけど。
 あいつのこと、知りたい。






 声が聞こえた。

 おチビさんの声。

 鋼の錬金術師の。

 エドワード・エルリック。

 俺の、弟。

「……呼んでる…?」

 建物が崩れる音に紛れて聞こえた。
 俺の名前…「エンヴィー」と。

 だが、どこからだか解らない。
 正直、逢いたくなんかない。
 理由は解らないけど、逢いたくない。

 とりあえず、火のない場所を探して歩き始めた。

 呼んでるからって、わざわざ会いに行ってなんかやらない。

 そんなの、プライドが許さなかった。




 火のない場所まで来ると、避難してきたらしい男が数人。
 それは普通のことなんだろうけど。
 でも、俺は嫌だった。

「…人が居るのかよ…何かウザい…」

 あまり人の居る場所は好まないからか…段々不機嫌になってきた。

 俺の小さな呟きが聞こえたのか、傍にいた男が反応した。

「…あ?今何か言ったか?お前」

「は?」

 イライラしていた。
 ホーエンハイムはいないし、エドは自分を探しているし。

「言ったけど?それがどうかした?」

 言い返すと、別の1人に突然胸ぐらを捕まれた。