Crush
 俺の仕える人は従兄弟で、何でも出来て強くて格好よくて、そして、年上で優しくて綺麗な恋人がいる。
 その主の恋人は俺の思い人でもあって。
 叶わないと知っていても、思うだけは自由だと思って…何年経っただろう。




「殿!何をなさっているのですか!」

「見りゃ解るだろ、稽古だ」

「真剣など持ち出さないでください!」




 庭先で真剣を振り回す梵天丸…もというちの殿、政宗に顔をひきつらせた小十郎が駆け寄っていく。
 政宗は小十郎を傷付けないために止まらざるをえない。




 あの二人が出来ていると知ったのはいつだったか。
 小十郎は何だかんだ言って政宗には甘いし、政宗も小十郎が大好きで、小さいときは男である小十郎を嫁にするんだと言い張っていた。
 小十郎は男なのに女の人に負けないくらい美人で優しいし、本当の母親の愛情をちゃんと受けられなかった政宗の母親代わりだったところもある。
 いつからか嫁にするとは言わなくなったけど、政宗の小十郎を見る目も小十郎の政宗を見る目も、ただの主従ではないものに変わっていた。




「…両思いなんだろうな…」




 幸せそうで、幸せになって欲しくて。




「小十郎も政宗も、俺の大事な人だもんなぁ」




 二人の、およそ恋人には見えないやり取りを眺めながら、そう呟く。
 小十郎がどうかは知らないが、きっと政宗はお互いのために別れろと言われても聞かないだろうし、小十郎を手放しはしないだろう。




「殿」




 渋々小十郎に渡された木刀を握る政宗に声をかけた。




「何だよ、成実」

「片倉殿のこと、泣かしたら承知しませんからね」




 笑顔で言うと、驚いたような顔をしていた。
 そして意味を理解したのか、にやりと笑う。




「当たり前だろ」




 小十郎は意味が解らないのか首を傾げている。
 小十郎には解らなくていい。




「お幸せに」




 聞こえないように呟いて、二人をずっと眺めていた。