| 「小十郎」
政宗に呼ばれて振り返り、小十郎は目を丸くした。
黒い洋装をし、外套を羽織り、口元から牙を見せた主の姿を見たからだ。
「何ですか、その格好は…」
「吸血鬼ってやつだ」
「…吸血鬼?」
意味が解らない、という顔をした小十郎に政宗は言った。
「Trick or treat!」
「は?」
手を差し出して笑顔を向ける政宗。
小十郎は首を傾げた。
「菓子をくれなきゃ悪戯するぜ」
「…何の嫌がらせですか?」
「今日はHalloweenてeventなんだ」
嬉しそうに語り出す政宗に溜息をつき、小十郎は懐から包みを出した。
「殿、はいどうぞ」
「え、あ…thanks」
政宗は意外そうな顔をし受け取り、しょぼくれた。
「…いかがなさいましたか?」
「いや」
首を振る政宗を一瞥すると、小十郎は去っていった。
「…まさかこんなものを持っていやがったとは…」
小十郎にもらった包みを開くと、抹茶飴が入っていた。
口に入れて甘みと苦みを味わう。
「まるで小十郎みてぇな味だな」
そう呟いて、政宗は溜息をつく。
大好きな小十郎は自分にとても甘いのにたまに厳しい。
でも、そんな小十郎が政宗は好きだ。
「菓子をもらいはしたが…今夜はあいつに悪戯するか」
そんな政宗の企みなど知るはずもない小十郎。
その夜散々政宗に悪戯をされ、眠れないまま朝を迎えましたとさ。
「殿の馬鹿」
幸せそうな政宗に小十郎は悪態をつく。
「そんだけお前が好きなんだよ」
政宗の言葉に呆れる小十郎。
それでも、そんな主を嫌いになれない、と小十郎は自分にも呆れるのでした。
終
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