| 約束。 |
「小十郎、お前の髪はきれいだな」 「ありがとうございます、梵天丸様」 「せっかくきれいなんだから、のばせ」 「何故ですか?」 「お前の髪が好きだし…長いほうがお前にはよくにあう」
部屋を散らかし放題にした君主は、部屋の中央に仰向けに寝ていた。 「ちぃと捜し物してたんだよ」 「言ってくだされば私もお手伝いしましたのに」
「?」
「どちらへ行かれるのですか」 「ちょいと町まで」 「殿がお一人でなど危険です、私もお供します」 「大丈夫だって。お前には片付けがあるだろ」
「片付けなど帰ってからで充分間に合いますが」 「俺が帰るまでに綺麗にしておけよ、小十郎。町には成実を連れて行く」 ならば、と渋々承諾した。
嬉しそうに出かけていく主を見送り、改めて片付け始める。 「こんなに散らかして…殿は本当に仕方のないお方…」 それでも、そうやって主の世話をするのが嬉しいと思う。
「小十郎!」 嬉しそうに駆け寄ってくる主に腕を掴まれもと居た部屋に連れ戻された。 「と、殿?」 「sit down!」 座れと言われて畳の上に座り込む。
「黙ってろって」 髪を結い上げていた紐が解かれ、髪がぱさりと肩に落ちる。 「殿?」
「そうですか?」
主の言葉とともに解かれた髪が上にまとめられる。 「…何が…ですか?」 「伸ばせって言ってから十年」
「何故ですか?」 「お前の髪が好きだし…長いほうがお前にはよくにあう」
いつも自分で結っている高さとほぼ同じ位置で髪が結われていた。 「何をしたかったんですか?」 「鏡見ろ…あ〜…見えねぇかな」
「この紐は?」 「買ってきた」 「何故?」 「…本題はそこじゃねぇ…先についてる石だ」
「な…」 「十年前、コレをもらったとき親父に言われたんだよ。いつか本当に愛する人が出来たら、その人に贈れって」 主は石に口付けて、懐かしそうに話す。 「んで、お前の髪をいじってるときに言った」 「え?」 「お前のことが大好きだから、お前に贈るってな」
「ですが、私は…」 「小十郎の髪が俺の好きな長さになったらお前にやる!お前が嫌がってもだめだからな!」
「…殿…でも…」
「お前が嫌がってもやるって言った」 「……はい…」
「はい、殿…私もですよ」
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