| 木漏れ日の光 |
| 「若、どこにいらっしゃるのですか?」
いつからか、好きになっていた人の声。 いつでも、微笑んでいて欲しい、愛しい人。
涼んでいた木陰から腕だけを出すと、駆け寄ってくる足音が聞こえた。 「若、何をなさっているのですか?」 「暑いからな…涼んでいた」 木陰にいれば、幾分かは涼しく感じられる。 「さようですか」 そう言うと、一呼吸おいて小十郎は俺の横に座った。 「若、私もよろしいですか?」 「もう座っているだろうが」 「一応」
いつも思う。
「ありがとうございます」
しばらくその顔を見つめて、そして名前を呼んだ。
「はい、若」 振り向いた小十郎の首に手を伸ばして抱きついた。 「若?」 突然のことで驚いたのか、びくりと体を震わせる。 「…何故俺を…探していた?」 「…若の姿が見えなかったので」 そうか、と告げて離れた。
まるで、大切な何かを探すかのように。
出たくなかった。 俺は望まれないのだと思った。 大好きな小十郎にも、父上にも。
昼に隠れたが、気がつくと陽も暮れかけていた。
「梵天丸様!どこにいらっしゃるのですか、梵天丸様!」 半分泣いているような声。 自己嫌悪していたのにそれでも出るのが怖かった。
どのくらい経ったか、蝋燭の灯りが見えて小十郎の声が聞こえた。 「探しましたよ」 「…小十郎…」
「泣いていらしたのですか?」 「……別に…」 「…出ましょう、ここから」
「その頬はどうした」 「あ…これは…いえ、気になさらないでください」 少し躊躇いがちに言ったので解った。 もっと早く出ればよかった。
小十郎に汚れた服を着替えさせられながら言われた。 「…言いたくないなら言わなくてもいいです」 ただ、と続けた。
頷くと、嬉しそうに微笑んでいた。
そんな過去を思い出していると、小十郎がふと口を開いて言った。 「あぁ…会う奴会う奴みんなおめでとうと言っていた」 だから涼んでいたという理由もある。
少し淋しそうな顔だった。
「…いえ…」 目を逸らし、小十郎はまた目を閉じた。
「何故?」 「…若の傍につくようになってから、ずっと…そうしていたんですよ」 そういえばそうだ。
「…若に渡したいものがあって、その準備をしていたら間に合わなくなってしまいました」 小十郎は目を開いて苦笑した。
「それはまた後ほど若にお見せしますので秘密です」
そのまましばらく、小十郎と手を繋いで揺れる木漏れ日を見つめていた。 |